【論理思考トレーニング】論理的な文章の書き方講座

ロジカルシンキング講師の海老原です。

私は受講者の実際のメール文を課題にして個別添削するという、一風変わったロジカルシンキング講座を行っています。

論理的な文章を書くことは最高のトレーニング

なぜメール文を課題に使うか。論理的な文章を書くことが、ロジカルシンキングの最高のトレーニングになるからです。

なぜクリティカルシンキング講座を受けても使えないか

ロジカルシンキング講座の初めに過去の研修受講経験を聞くと1,2割が手を上げます。しかし「では、研修のあとピラミッドストラクチャーやロジックツリーを何回使いましたか?」と聞くとせいぜい1,2回です。つまり学んだことを全く使っていない。その後のトレーニングがほぼゼロなのです。これでは、ロジカルシンキングができるようになるはずはありません。

論理的な文章を書くことがトレーニングになる

そこでオススメなトレーニング方法が、論理的な文章を書くことです。特にメールは多くのビジネスパーソンが毎日のように使っているでしょう。メールなどを使って論理的な文章を書くことで、毎日ロジカルシンキングのトレーニングができます。

文章でロジカルシンキングを鍛えることはできるか

論理的な文章を書くだけではトレーニングとして狭いのではないか、応用が効かないのではないか、という心配もあるでしょう。確かに正しい日本語を書く訓練だけでは応用は効きません。しかし、メールには相手がいます。ビジネスツールとしてのメールでは、相手に説明したり説得したりするために効果的な構造を考えたり、メールの目的を深く考えることが必要です。つまり使い方次第で、論理思考力を総合的に鍛えることが可能です。

ただ定型的な演習パターンにするのは難しい。そのため私は講座前に受講者にメールを提出してもらった上で、1通1通個別に添削します。目的との整合生、適切な構造化、わかりやすい日本語の使い方など、1通1通をロジカルシンキングトレーニング題材として議論し、フィードバックしていきます。

論理思考とは

論理思考とは、一言で言うと「ポイントを押さえて深く考えること」「自分の言いたいことが相手にわかりやすいこと(納得感)」です。

論理思考を実践するには、次の3つだけをしっかり押さえればよい。

  • 目的を押さえ続ける
  • 構造的に考える
  • 「要は」「たとえば」を使いこなす。「主張」と「根拠」のセットを使いこなす

今回は、特に「構造的に考える」と「要は」「たとえば」について解説します。

論理的な文章の書き方<トレーニング問題>

論理的な文章の書き方をマスターするには、実際に文章を書いてみることが重要です。次は、私がロジカルシンキング講座の初回で出している課題です。問題文を読んで10分で実際に文章を書いてみてください。

文章トレーニング問題「上司に値引きの説明をする」

あなたはある商品の営業担当者です。

現在あなたはA社に定価100万円の商品Bを提案中です。あなたは、定価100万円の商品Bを値引きして60万円で販売したいと考えています。

しかし、商品Bを100万円から60万円への値引きは、担当者である、あなたの決裁権限を超えています。そのため、あなたは上司であるTマネージャーを説得しなければいけません。

Tマネージャーに対して、100万円のサービスを60万円に値引き提案の承認をもらうための「説得の文章」を作成してください

なお、前提はある程度自分で設定してかまいません。

文章トレーニング問題解答例

Tさん、A社提案の件が大詰めになってきたので、相談させてください。

定価100万円の商品Bを提案しています。これを40万円値引きして60万円で販売することを承認いただけませんか?

承認いただきたい理由は以下の3つです。

60万円なら競合のC社に勝てそうです。C社は商品Bと機能はほぼ同等の商品を70万円で見積を出しています。

次に、お客様担当者のDさんは、60万円ならうちの商品で通せそうだと言っています。上司のE課長も価格が社内説明できれば、うちとの付き合いを優先したいようです。

最後に、B商品の売上原価は50万円なので60万円で販売しても利益がでます。今回の商談の利益は下がってしまいますが、商品Bの導入に関連して今年中に何件か追加商談ももらえそうです。

以上、A社向け商品Bの値引きについて承認ください。

構造を考える

トレーニング課題の回答例について順番に解説します。

すべてのビジネス文章は主張である

まずビジネスで書く文章の大前提です。ビジネス文書、ビジネスメールは、基本的にすべて主張が含まれています。厳しく言えば、主張のない文章は独り言と同じ。ビジネスにおいて目的のない独り言を伝えてはいけません。

構造化された文章とは

文章全体の構造は、メインの主張とそれを支える3つのサブの主張で構成されます。

メインの主張とそれを支える3つのサブの主張

メインの主張は「定価100万円の商品Bを提案しています。これを40万円値引きして60万円で販売することを承認いただけませんか?」です。サブの主張は、この値引きを許可すべき3つの理由となっています。

理由は3つが座りがよい

理由の構造は今回3Cを使っています。顧客(Customer)、競合(Competitor)、自社(Company)の3Cは営業商談の判断に使いやすいと考えました。3C以外にも構造は考えられますが、3は論理的な文章のマジックナンバーです。経験則として「理由は3つ」というと納得感のある構造になりやすいです。

構造を文章に落とし込む

論理構造として3Cを使うことにしました。この構造を実際の文章に落とし込んでいきます。

「要は」を支える「サブ要は」

「要は」とは、要約です。まず文章全体で言いたいことを数行でまとめます。メールならできれば1行、長くても3行までです。

サブの主張は1つの主張につき1段落でまとめるのがわかりやすいでしょう。このとき段落ごとの要約が「サブ要は」です。「サブ要は」は、段落ごとの言いたいことを一言でまとめます。

サブ要はは段落ごとの言いたいこと

この文章の段落構造は、次のように冒頭+3段落の合計4段落になります。

冒頭+3段落の合計4段落

「要は」と「たとえば」のセット

論理的な文章は、主張と根拠のセットで構成されます。たとえば、1段落目の主張と根拠は次のようになります。

【主張1】60万円なら競合のC社に勝てそうです。

【根拠1】C社は商品Bと機能はほぼ同等の商品を70万円で見積を出しています。

今回、理由であるサブの主張が3つありますので、主張と根拠のセットを3つ作る必要があります。

主張と根拠の3つのセット

なお、主張と根拠は「要は」と「たとえば」で言い換えられます。

論理的な文章の書き方としてPREPという型があります。PREPは、Point,Reason,Example,Pointの頭文字です。Reasonが「サブ要は」、Exampleが「たとえば」に対応します。

わかりやすく構造化された論理的な文章

トレーニング課題回答例の文章に、「要は」と「サブ要は」、「要は」と「たとえば」の構造を補足したのが次の図です。

要はと例えば
論理的な文章はわかりやすく構造化されている

いかがでしょうか。論理的な文章が、わかりやすく構造化されていることがわかると思います。

論理的な文章は目的を押さえている

論理思考の実践に必要なのは、「目的を押さえ続ける」「構造的に考える

「『要は』『たとえば』を使いこなす」の3つであると書きました。

最後に、論理的な文章における目的の役割について説明します。

目的が押さえられていないと構造化も台無し

トレーニング課題の文章の目的は「上司にB社向け値引きを説得すること」でした。目的がずれていれば、いくらしっかり構造化してわかりやすい文章を作っても意味がありません。

たとえば、値引きについて上司説得の必要が無ければ、ここまで構造化して説明する必要もないでしょう。あるいは、説得すべきことが値引きと納期調整の2つであれば、目的に合わせて主張が変わる。必然的に文章構造も目的に合わせて変わることになります。

ビジネス文章はすべての文に目的があるべき

ビジネスで作成する文章は、すべての文が目的を反映していることが理想です。逆にいえば、「目的のない文は書かない、削除する」のが、論理的な文章の書き方の基本です。

メール作成するうえで判断を迷うのが「前置き」でしょう。なんとなく書くのではなく、本来前置きにも目的を設定すべきです。回答例の前置き「Tさん、A社提案の件が大詰めになってきたので、相談させてください。」は、切迫感を伝えることで、判断の優先度を上げてもらえることを狙っています。